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 海外代理人インタビュー

米国のJeff弁護士から、来名するので夕方飲まないかとのメールが入りました。
その日は、ちょうど我々の勉強会の日だったので、ついでに彼に参加してもらうことにしました。

写真は勉強会の後の飲み会でのスナップです。
その折に彼にいくつか質問しました。質問には脈絡がありませんが、思いついたものをそのまま質問したものなので悪しからず。(所長守田)

Q.(所長守田、以下同) 日本では中小企業の多くが出願費用の捻出に苦労している。米国では中小企業に対して何か優遇策はあるの?

A. (Mr.Tekanic、以下同) 良く知られているように、米国では中小企業に対しては出願費用(特許庁(USPTO)料金)が半額になるね。これは特に書類等を提出する必要は無く、中小企業であることを宣言すれば減額の特典が得られるんだよ。もっとも中小企業に対する弁護士(弁理士)費用の補助制度なんかは無いけどね。

Q. 米国では中小企業やベンチャー企業から世界的企業になる例が多くあるような気がするんだけど。

A. うん良い質問だね。米国には中小企業を保護する法律がいくつかあるんだ。特許庁の料金が半額になるほかに、中小企業に対しては労働保険法が大企業ほど厳しく適用されないから、これは中小企業にとって経費削減になる。そして中小企業は大企業よりも減税の特典を受けられる場合が多い。政府管掌の利率の低い中小企業向けローンもあるよ。

さらに中小企業に投資しようという多くのベンチャー投資家がいるね。有名なのはシリコンバレーの投資家だけど、これに限らず、全米の多くの地にベンチャー投資家がいるんだ。だから、事業化のための資金調達が比較的容易なんだね。

また、証券取引法の規制が緩いので中小企業が投資家に株を売って資金化するのが容易ということもある。

 そしてこれは個人的見解なんだけれども、アメリカ人はリスクを厭わないところがあるよ。つまり我々の祖先はヨーロッパやアジアから危険を冒して渡ってきているから、成功のためにはむしろ進んでリスクを冒すという遺伝子が受け継がれているんだ。

Q. 新規性喪失に関する改正米国特許法の102条(a)(1)で規定される「その他、公衆に利用可能になった」とは具体的にどのようなことかな。

A. 例えばインターネット上で発明内容が見れるようになったとか、口頭で発明内容を発表したとか、図書館のみで閲覧できる例えば博士論文のようなものに発明内容を記載した、といったことかなー。USPTOは今のところこれについて何もガイドラインを発表していないから、そのうち訴訟で裁判所がなんらかの判断を示すと思うよ。

Q. 先願主義に移行した改正米国特許法の下で、複数の出願人が同日に同じ発明を出願した場合、誰が登録を受けることができるのかなー。日本だったら特許法39条で一の出願人を協議して定めることになっているんだけど。

A. 非常に良い質問だね。答えは僕にも分からないよ。確かに改正米国特許法の中にこれに関する条文は無いからね。まあ、どうなるのか事態の推移を見守るというとこかな。

Q. 改正米国特許法の102条(a)(2)の「発行特許(issued patent)」というのは公表された特許と同義なの?

A. 米国法の下では公表されない特許は無い。そして「発行日(issue date)」と「公表日(publication date)」は常に同じ日なんだ。だから答は「同義」ということになる。この点は、特許の登録日と特許の公表日がずれている日本とは異なるね。

-なるほど、今回も色々と参考になったよ。どうもありがとう。

注:なお、掲載の記事はあくまで単なる情報の提供であり、弊所は一切の法的責任を負うものではありません。

 

JEFF弁護士インタビュー

Q.(所長守田、以下同) 先日、ある中小企業のお客様から、販売している商品が特許の侵害になるか否か判断して欲しいとの依頼があったんだ。私の結論は侵害にはならない、ということだったのだけど、お客様は万が一でも警告を受けると面倒だからということで、商品の生産・販売はあきらめた。この点、米国の状況はどうなの。

A. (Mr.Tekanic、以下同) 米国でも状況は日本とほとんど一緒だね。大きな企業から訴えられた場合、中小企業が訴訟をやるのは危険だしお金がかかるよ。というのは米国では損害賠償額も弁護士費用も日本よりずっと高いからね。

侵害だと認定されると、あげている収益の10~25%の高い賠償額や、時には権利者の遺失利益が全て賠償額として認められることがあって、これは侵害者の実際の利益よりもずっと高額になることがあるんだ。故意侵害なんかが認められると3倍賠償なんてこともあるし。

ここ10年間で、10億ドル以上の賠償額を認めた判決が沢山出ているし(例えばマイクロソフトなんかは数十億ドルの賠償額となったいくつかの判決で負けている)、小さい訴訟でも賠償額は50万ドル以上になる。弁護士費用も高いしね。

比較的小さな侵害訴訟でも弁護士費用は100万ドルを下らない。複数の特許や複数の生産品が問題になる大きな訴訟だと1000万ドル以上にもなる。一般的に損害額が上がれば、弁護士費用も上がるからね。

だから、中小企業がたとえ訴訟に勝った(非侵害の判決 訳者注)としても弁護士に高額の報酬を払わなければならない羽目になる。訴訟で原告に勝つためには100万ドル以上の弁護士費用を払うことになるから、それほどの利益が出ないと予想される場合は、たとえ権利侵害ではないと思っても、中小企業は生産品を売るのを諦めるわけだ。

一方、米国では特許訴訟を起こすのに殆ど費用がかからない。確か訴訟提起の際の費用(日本の印紙代のようなもの 訳者注)は200ドル程度だったと思う。これが日本やドイツなんかと大きく違うところだね。日本では原告が訴訟を起こす際には、普通かなり高額のお金を支払う必要があるから。

だから、日本などでは権利者は訴訟に発展する前に解決を試みるわけだ。これに対して米国では権利者はまず訴えを提起してそれから交渉に入る。この方が侵害者に対してよりプレッシャーをかけることができるからね。

米国では多くの中小企業がベンチャーキャピタルや銀行から融資を受けている。ベンチャーキャピタル等は訴訟を嫌うんだ。弁護士費用や損害賠償が高額になるから。だから、中小企業が特許訴訟で訴えられると、ベンチャーキャピタル等はそれ以上の資金提供を断ることになる。

したがって、米国でも中小企業が、特許侵害には当たらないのに生産品の販売をあきらめることは良くある。大企業から特許侵害だとして訴えられるのが怖いからね。

Q. 中小企業のお客様が米国で特許を取得した場合、何かアドバイスはあるかい?例えば、「侵害者を交渉の席に着かせるためにまず訴訟を起こすこと。というのは訴訟提起に必要な料金が米国は安いから。そして、訴訟を提起したら、なるべく早く妥協点を見出すように努力すること。というのは弁護士費用が米国ではかなり高いから」とか。

A. 中小企業が権利者である場合に米国では日本に比べて有利な法的システムがある。
それはつまり「成功報酬制(contingency fee)というやづだ。ご存じのように、米国では、弁護士が、時間報酬制に代えて、代理事件(訴訟であろうとなかろうと)で得られた金額の一定割合を報酬とする(成功報酬制)契約が認められている。

例えば典型的なのは、被告(侵害者)から損害賠償として得た金額の33%を弁護士が受け取るというようなものだ。もし権利者が侵害者から一銭もとれなかった場合には、権利者は弁護士に報酬を支払う必要が無い。もちろん実際の成功報酬制はもっと複雑だが、単純化するとこういうことになる。多くの弁護士は成功報酬制で訴訟をやることを好まない。普通は時間制報酬を好む。

しかし、特許訴訟では少なからぬ弁護士が成功報酬制で仕事をする。損害賠償額が非常に高額になる可能性があるからだよ。
これに関して、マイクロソフトを権利侵害で訴えて勝った中小企業がしばしば成功報酬制を使っている。これに携わった弁護士は大金を得ているらしいよ。

中小企業が成功報酬制で弁護士を雇った場合に、弁護士は侵害者にプレッシャーをかけるためにしばしば訴訟を仕掛ける。
そして、なるべく労少なくして侵害者との話をつけて、できるだけ多くの金を払わせようとする。ある時は侵害者が早々に妥協して弁護士が労少なくして十分な報酬を得ることがある一方、ある時は侵害者が抵抗して裁判をしなければならないこともある。この場合は原告(権利者)の弁護士は無報酬で多大な労力を払うことになる。これは一種のギャンブルだね。しかし、このような仕事の仕方を好む弁護士もいる。

一方、中小企業が成功報酬制の弁護士を雇いたくない場合や、成功報酬制で事件を担当してくれる弁護士が見つからなかった場合には、多くの場合、訴訟に持ち込むことなしに解決に向けて必死の努力をすることになる。

その方が安くつくし、危険も少ないからだ。多額の賠償金を得ようとしなければ、弁護士費用も安く比較的早期の解決が可能なんだ。しかし、十分な賠償金を得たいと思う場合には侵害者にプレッシャーをかけるために比較的早期に訴訟を提起することになる。この場合には、事件を早期に解決させるために大いに努力する必要があるね。訴訟に移行すると弁護士費用が非常に高くなるからだよ。

-なるほど、今回は参考になったよ。どうもありがとう。

注:なお、掲載の記事はあくまで単なる情報の提供であり、弊所は一切の法的責任を負うものではありません。

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